いつもはメールで済ませることを、
今日はふと思い立って、手書きの手紙にしてみる。
あの人の顔や声を思い浮かべながら、万年筆のペン先を、特別に買い求めた便箋に走らせる。
この漢字はどうやって書くのだったかな、万年筆だと間違えたら消せないんだよね。
そういえば学生時代、格好つけて難しい言葉を辞書で調べながらラブレターを書いたことがあったな。
彼女はいま、元気だろうか。
インクで手が汚れてしまった。
子供の頃、クレヨンで手のひらをいっぱい汚しながら、覚えたてのひらがなを夢中で書いたな…
気が付いたら床にも書いてしまっていて、あとでお母さんに叱られたっけ。
なつかしいなあ。
ああ、さいごにひとこと、気の利いた言葉を書きたいけど…思いつかない。
ちょっと一息、コーヒーでも飲もうかな。その間にインクも乾くだろう。
いい言葉が浮かんでくるかもしれない。
あの人は、この手紙をどんな顔で読んでくれるだろうか。
なんだかとても、贅沢な時間をすごしている気分だ。
時間をかけるのも、たまには悪くない。
万年筆とともに。
どうぞみなさん、
万年筆がはこんでくる、懐かしくて贅沢な時間を過ごしてみてください。